ピアニストの考えを知るために、演奏がおこなわれる状況について、少しだけ準備運動もかねて、リサーチしてみましょう。

私たちがピアノを弾く時、一番コンディションの良い状態は、リラックスしている状態です。

実際には、コンサートなどでたくさんのお客さんが、ホールで自分の演奏を待ち侘びてくださっている状態のなかに、一人で乗り込んでいくのですから、そう心穏やかにと言うわけにはいかないのが通常でしょう。

ピアニストにもよるでしょうが、緊張を全くしないというピアニストには私は出会ったことがりません。

緊張の度合いにもよると思いますが、緊張しにくいタイプの人でも(本人が意識していなくても)、多少はその特異な状況に影響を受けるものです。

一方、自分の家で一人で演奏する時にはだれしもリラックスして音楽に没頭できるのです。

しかし実際には家でピアノを弾くときの環境とホールでピアノを弾く時の環境にはさまざまな違いがあります。それらを少し箇条書きにしてみます。

・ピアノの大きさ(家のピアノよりもホールのピアノはとても大きい、コンサートグランドピアノ)

・ピアノの弾きやすさ(ピアノのメーカーにもよるが家のピアノとの比較となるため違いがある)

・ペダリングの違い(踏みやすさ、靴を履いているか否かなどの違いがある)

・鍵盤数の違い(88鍵以上のピアノもある)

・空間の大きさ(ホールの空間はとても大きい)

・残響の違い(ホールの残響※は家より豊かで残響時間が長い)

・音の反響の違い(家と比べて反響する空間がとても広いので自分の音の行方を知る必要がある)

・明るさの違い(ホールは照明が十分に鍵盤やピアノに向けて調整されているのでとても明るい)

・椅子の違い(自分の椅子を持ち込めれば同じだが基本的に座り心地が違う)

・人間の数(自宅では一人だが、ホールにはたくさんの聴衆がいる)

・衣装の違い(ホールでは特別な衣装を身につけることが多いため体の動きに制約を受けることがある)

※残響(残響時間)とは、鳴った音が消えるまでの時間ではなく、100デジベルの音(しっかりと大きく鳴らしたピアノの音など)が鳴るのをやめてから60デジベル(走行中の自動車内の音)まで減衰するまでの時間のこと。

他にもいろんな違いがあると思いますが、あらためて見ると、これだけの違いがあることだけでも驚きです。

特にその中でも一番大きいのは、家のピアノとホールのピアノが別の楽器というところでしょう。

バイオリンや、オーボエ奏者と違い、ピアニストは、自分が一番上手く弾ける使い慣れた楽器を、毎回ホールに持ち込んで演奏すると言うのはあまり現実的ではないのです。(ピアニストの中には楽器を持ち運ぶ人もいますがかなりのコストがかかります。)

よって、ピアニストはこれらの違いを克服したり調整したりする能力が必要になります。

後述しますがそれにはコツがあります。

これらの違いを踏まえて、私たちがリラックスした状態でピアノを弾く時、集中力は通常より非常に高い状態になります。

アルファー波が出ている状態や、ゾーンに入った状態など、いろいろな言い方がありますが、じつはこういう高い集中状態を維持し続けるには感情の状態をある一定の状態に保つとうまくいくのです。(のちほどお話しします。)

仮にその集中できている時の最高の状態を10という数字で表すとしましょう。ピアノ演奏にはさまざまな要素があります。こちらも少し箇条書きにしてみると次のようになります。

・いつもどおりのタッチで弾けているか?

・ピアノの音がホールに対してちょうど良い大きさで鳴っているか?

・タッチをコントロールすることによって思い通りの響きが出ているか?

・自分の音がホール全体でどう響いているか把握できているか?

・呼吸はいつも通りにリラックスしてできているか?

・体が緊張で固くならず柔軟に動いているか?

・よく歌えているか?

・客観的に音楽が聴けているか?

・暗譜は大丈夫か?

・難しい箇所や跳躍する場所はきちんと落ち着いて弾けているか?

挙げればキリがありませんが、例えば、上記の10項目に10の集中力を割り振って対応しようとするとどうなるでしょうか?

想像してみてください。

各項目に1ずつ割りふって、それができているかを一項目ずつモニタリングすることは、むずかしいのではないでしょうか?。

そしてそれを毎秒毎秒し続けることなど不可能に近いのです。

意識して、人間がたくさんのタスクを同時にコントロールすることはなかなか難しいのです。

それでは、ピアニストはそれらたくさんの項目を、どのように意識してコントロールしているのでしょうか?

ピアニストの多くのは、ピアノ愛好家がやらなければならないたくさんのタスクを無意識に行なっているのです。

無意識とは、簡単に言えば「意識をしない」と言うことです。

例えば、私たちが自転車に乗るとき、どうやって右のペダルを漕ぎ、左のペダルを漕ぎ、またそれを入れ替え、倒れないようにバランスを取っているのでしょうか?

私たちは、その工程を一つずつ順番に考えながら自転車を漕いだりしませんが、自転車はスイスイと前に進んでいきます。

これは、たくさんのタスクを無意識におこなっているからです。

無意識で行われるようになると「習慣化」され、あなたが意識しなくても自動的に行われるようになります。

ここでは、「習慣化」をより楽しく感じるために「自動化」と呼んでみます。

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