ここでは、私の経験をもとに話を進めていきます。
ピアニストは1つの曲を仕上げるにあたり、まず何日で仕上げるかを決めます。
短い曲ややさしい曲の場合は、かんたんに予想がつきますので、他の曲と同時に進めながら1週間以内に仕上げます。
とても難易度の高い曲や、演奏時間の長い曲の場合、ある程度のマージンを持って期間を設定します。
そういう場合でも、1部の曲をのぞいて1ヶ月を目処に仕上げます。
仕上げる時は1曲だけでなく、やはり他の曲も同時にさらいながら仕上げることが多いです。
1ヶ月以内に、ある程度形や、目処が見えない曲の場合、その曲を弾かないと決めることもあります。
何日で仕上げるか決めたら、次は、譜読みにかける時間を逆算して決めます。
譜読みの時間には、運指や表現の工夫にかける時間も含みます。
時間をかけたほうが良い場所は、あらかじめわかるため、別に時間を取ります。
最初の譜読みの時に、運指に工夫が必要なところは、予想がつくため、そういう部分をピックアップして、前後との関係をもとに運指を決めます。
ときに途中で運指を変えることもありますが、そうすると訂正は非常に時間がかかり無駄な時間となるため、できるかぎりていねいに運指を決定します。
その後、譜読みを始めますが、曲が長い場合、途中で区切ります。
乱暴に言えば、1ページごと、2ページごとや楽章ごとに区切ることによって、短い時間で集中してして、同じことの繰り返しができるため、作業効率が上がるのです。
私の場合、その段階で、強弱や表現も同時に7~8割完成させながら弾いていきます。
2割残すのは、弾いていくうちに必ず考えが変わることがあるからです。そして、私の場合、7~8割仕上げるつもりで弾いていくことによって、客観的に自分の演奏を、一歩引いたところで確かめながら弾けるため、なんとも心地よい気分で練習ができるからです。
実際の譜読みを始めた段階で、すでに7~8割仕上げる心づもりで弾いていくのですが、必ず、口笛を吹きたくなるような、自由で楽しい気分で行います。
時間が経って、いろんな細かいことが気になり出したり、疲れたりした時は、練習時間内でも構わず休憩します。
この方法で譜読みを行う時、譜読みのミス、運指のミス、が絶対ないようにします。
これが一番重要です。細心の注意を払って、自信を持って正確に読めれば、ミスの修正が必要なくなるからです。
間違った音で、一度たりとも弾かないこと、間違った運指で一度たりとも弾かないこと、がスピードアップにつながります。
そうすることによって、音のみの暗譜は、とても早いスピードで行うことができ、音に対する自動化が進みます。
自動化が進めば、自分の音を聴いて、音楽を感じることにより集中力を割くことができます。
そうすると、一気に7~8割曲を仕上げていくことができるのです。
仕上げていく中で、触れていませんが、より楽に弾くための脱力等はすでに自動化できているため、ほとんど考えません。
一部のパッセージに引きにくさを感じた時のみ工夫を加えます。
7~8割仕上がってきた時には、暗譜も出来上がっていることが多いのですが、曲によってはアンプしにくい曲もあります。
そういう場合は、やはり、曲を短いパーツに区切って繰り返し弾くことによって覚えたり、曲のパーツにA、B、A’、B’などの記号を振って譜面だけで覚えることもします。
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