美味しいコーヒーと言っても特別なコーヒーを飲んでいるわけではない。


コーヒーの淹れ方にこだわったときもあったけど、だんだん便利で美味しい方に流れていった。ネルで自分の淹れ方にこだわる一時から、今では、極端に安易な全自動コーヒーマシンになった。

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ある程度、珈琲の豆の挽き方や、水の量、などコントロールできて便利でいい。おまけに私のものは、エスプレッソだけでなくドリップコーヒーまで淹れることができるので気に入っている。
突き詰めていき、行き着くところまで行くと、自分にはこれが楽で良い、心地が良い、という快然たる場所が見つかるものだ。

カメラマンのジェットダイスケ氏の記事を読んで、自分の仕事で、同じことを考えていたことに気づき、嬉しくなった。
「今の日本のメーカーは機能性のことを言い過ぎなんですよ」ジェットダイスケがライカを選んだ理由

カメラも昔、一眼レフに凝って何台も買っていた時期があったが、今ではスナップが安楽に撮れて、心地の良いRX100M5に落ち着いた。

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どれも、自分の仕事ではないので、自分の心地よいポイントはある程度プロから見れば低いところにあるはずだ。数値上の高性能やたくさんの素晴らしい機能は、カメラを高性能にしていき、それを使う側、誰もが良いと感じる写真を撮れるようになるが、時にカメラという道具をコントロールする側を盲目にしていくこともある。

ジェットダイスケ氏は、それがわかった上でプロフェッショナルたる感性の再構築を解説しているのだろう。

すばらしいと思う。

ヘッドホンに思考が跳んだ。

私が一番気に入っている愛機は、ゼンハイザーHD800

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コンサートホールで、演奏家がこういう風に響いてほしい、という祈りが具現化したような音の色を再現してくれる。まさに、コンサートホールの音。
仕事上、音はたくさん聴くので、この子がNO1だったのだが、最近は、やはりアンプのスイッチを押したり、コードの交換して、神経質に音の違いを批評したりすることにも疲れ、心地よいBuletoothヘッドホンに落ち着いてしまった。しかし、一昔前からは考えられないくらい音質も上がり、今使っているゼンハイザー MOMENTUM Wireless M3は、もちろんHD800には及ばずとも、ヘッドホンを広げるだけでスイッチが入り、コードもなく、心地よいホールトーンを楽しめる。

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ヘッドホンに関しては、仕事に関係する道具でもあるので、心地の良いポイントはレベルは多少高い場所にあるかもしれない。ソニーのヘッドホンやその他のヘッドホンも好きなのだが、クラシックを聴いていると、どこかから流れてくる録音された音楽に聴こえてしまう。
ゼンハイザーのヘッドホンは、コンサートホールで聴いていた音楽体験の記憶が反芻される感じ。

心地よさが違う。

しかし、1つだけ確実に言えることは、どんな分野で使われる道具も、完成度の高い道具は(値段も張るが)、コントロールする楽しみにおいて、その他を圧倒する。そして、道具のほうから、それを使う側に奥行きの深い提案してくれるということだ。

さらに、唯一無二な個性を兼ね備えている。

機械ではなく、道具でもなく、そばにいる大切な人のような意識、存在、を感じるのだ。

どんな分野のプロさえも、自分の道具から学ぶことはとても多いはずだと自分の経験から確信している。

ピアノは、楽器であり、仕事道具だ。いま自宅にあるSteinwayもYAMAHAも大好きだ。

でも、C型が来てからというもの、そればかり弾くことが多くなった。
いつも、弾く前にCがどういう気分なのか、今日の機嫌は良いのか、つい気にしてしまう。
仕事でピアノを弾くのは家でも、ホールでも同じ作業。心地が良いほうがいいに決まっているが、ピアニストはピアノを運べないので、ピアノを選べない。
だから、いつもそのホールに設置されているピアノの性格や、ご機嫌に注意して、周波数を合わせることに意識を傾ける。ホールとピアノの相性が良ければ、そこに置いてあるピアノの機嫌は良いことが多い。

何故か、ピアノという楽器は(その他の楽器ももちろんだと思うが)、空間との相性を最初にチェックしてあげて、そこを気にしてあげると、心を許してくれるのだ。心地よくピアノを弾くためには、まず、ピアノに心地良くなってもらうことだと思う。

と、とりとめもないことを考えているうちにコーヒーが空だ。美味しいコーヒーだった。

そうそう、コーヒーをもう1杯入れる直前に自邸を設計してくれた建築家の言葉を思い出した。「家、という心地よい空間が、住む人を快適にするのです。」

思い出すと、さらに気分が良くなった。

心地の良い家をつくってくれてありがとう。

次はカフェ・ジャポーネだ・・・。

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