曲にもよりますが、私たちは、演奏中に弾いたり歌ったりするのがとても楽しい部分と、ちょっと弾くのに身構えてしまう少しだけ難しく感じてしまう心配な部分があると思います。
ピアニストであれ、ピアノ愛好家であれ、ピアノが好きな小学生であれ、多少なりとも必ずそういう部分はあります。
もし、心配な部分にたいして、事前に対応する方法を考えて演奏中に実行できれば、それは立派な危機対応能力を身につけたことになります。
理解しやすくするために先ほどの図(感情の輪)をもう一度掲載します。
それでは演奏中に感じる心配事について例をあげて考えてみましょう。
「次のパッセージから跳躍が多くいつもミスタッチをする」と考えてしまうとき、その時点より少し前の段階では、まだ「不安」な気持ちの状態です。
そして、だんだんと跳躍の連続が近づいてくると、今度は「心配」に変わっていきます。
さらに、跳躍が始まると、ついに「恐怖」になってしまいます。この心の状態は「赤信号」です。
「赤信号」のパターン
次のパッセージから跳躍が多くいつもミスタッチをする。「不安」
↓
跳躍が近づいてくる「心配」
↓
跳躍がはじまる「恐怖」
「次のパッセージから跳躍が多い。」と考え、「体に力が入らないよう楽に保つ。」と考えることで、「喜び」の状態とは行かないまでも、すこしだけ「安らぎ」を感じることはできます。
(※自分の体で力の入りやすい部分の脱力を意識します。詳しくは後述。)
そして、跳躍が近づいてきたときに、落ち着いて弾けるよう「手や腕が正確に動けるよう、ゆっくりと呼吸し、十分にゆとりを持ったテンポを感じる」と考えることで「安らぎ」を少し強く感じることができます。
実際に跳躍が始まったら、「一つ一つの動きを正確に準備して、ていねいに急がず弾く」と考え、それを端折らずに一つずつ、1回ずつ実行していきます。
そうすると自分が弾いた音が、一つずつ正確に音が聞こえるので「安らぎ」が「喜び」に近づき始めるのです。その結果、「青信号」により近づきながら演奏を続けることができるのです。
「青信号」のパターン
次のパッセージから跳躍が多い
(体に力が入らないように楽に保とう)「関心」
↓
跳躍が近づいてくる
(手や腕が正確に動けるよう、ゆっくりと呼吸し十分にゆとりを持ったテンポを感じる)「予測」
↓
跳躍が始まる
(一つ一つの動きを正確に準備して丁寧に急がず弾く)「容認」
↓
正確に弾けて音がよく聴き取れる
(繰り返し跳躍を丁寧に弾く)「信頼」
↓
確認ができ、「安らぎ」
↓
「喜び」へ
こうすることによって、私たちは「恐怖」を回避しながら常に楽しい感情の状態のまま、演奏を続けることができるのです。
(弾きにくい技術的な原因の追求は後ほど行います。いまは、心の動きに注目して話を進めています。)
まとめてみると次のようになります。
①自分の苦手な場所、もしくは先生から指摘してもらった場所を「苦手」「うまくいっていない」「うまく弾けない」と自分自身で感じた場合、「安全で快適に変化させることができる箇所」と認める。(視点を変える。)
②自分が弾く曲の最初から最後まで、楽しい感情「喜び」で演奏する。「安全で快適に変化させることができる箇所」を最初に変えるため、「不安」「恐怖」を感じる場所は、丁寧に正確に弾く方法を実行すれば、だんだんと楽しい感情へ向かう。
③実際に丁寧に正確に弾ける方法を考え決めたのち、実際に「予測」「容認」「信頼」「安らぎ」「喜び」の気持ちのどれかで弾く練習をする。
(1つずつ試すのも良い勉強になる。)
考え方としては理解できるけど、実際にそれを演奏に使うのはむずかしい、と感じる人もいると思います。
この方法は理解はできるけど、自分の考え方をそのように瞬時に変えていくのは難しいと感じるからです。
ここで、そう感じてしまったあなたは、もう一度「7自動化するために」から「10ピアニストの考えに近づける」までを読んでみてください。
自動化は、だれにでもできることで、決して難しいことではありません。
心配な箇所の「丁寧で正確な弾き方」と「安らぎ」の気持ちをセットにして弾けるよう自動化することは、だれにでもできることなのです。
No responses yet